たまご(鶏卵)

前にすき焼きはたまごを美味く食べる料理だと書いた。 

とはいえ、たまご料理でポピュラーなのは「ゆでたまご」「目玉焼き」「たまご焼き」だろう。 

簡単な料理だと思い勝ちだが、案外奥が深い。 

 

「ゆでたまご」は簡単にできるが、科学的知識がかなり必要だと思っている。 

単に茹でた玉子というだけでは料理ではない。 

 

まずは鶏卵の仕組みを知らなくてはならない。 

楕円のような、いわゆる玉子型をしている。 

玉子には尖っている方と丸い方がある。 

丸い方には「気室」というものがあり、気体(空気)が入っている。 

外側に固い殻(卵殻)があり、その内側に薄い「卵殻膜」というのがある。 

中身の外側は「卵白」で、内側は「卵黄」である。 

白身と黄身だ。 

玉子と書くことが多いが、卵であり、中国語では「」である。 

卵白はつまり「蛋白」であり、蛋白質の元になった言葉なのだ。 

卵白には濃厚卵白水様卵白があり、後者は卵黄の周りと中央外側に存在している。 

割ってみると盛り上がった卵白と広がる卵白が判るだろう。 

中央に卵黄を固定(それほど強くはないが)するために「カラザ(卵帯)」がある。 

殻座・殻鎖などとあてるが、元はラテン語の音写なのだから上手い音写だと思う。(ジョーク=冗句 なみ) 

このカラザは尖った方と丸い方に、縦に伸びる蛋白質の帯だ。 

 

卵黄は65℃から70℃で固まるのに対し、卵白は58℃で固まりはじめ80℃程度で完全に固まる。 

この温度差と熱伝導によって、半熟玉子や温泉玉子ができるのである。 

 

生み立ての玉子には二酸化炭素を含んでいて、それが時間とともに抜ける。 

少し日数の経ったものの方がゆでたまごに向くとされるのはそのためである。 

もっとも、ゆでたまごで殻が割れ中身が飛び出すのはそれだけではない。 

気室の空気の膨張が一番の原因である。 

割れたゆでたまごを剥くと気室部分が大きく窪んでいることが判るだろう。 

お湯に酢や塩を入れると割れにくいという人がいるが勘違いである。 

あれは割れて飛び出した中身が酢によって散らずに固まるようにするものだ。 

ポーチドエッグは酢を入れたお湯で作るが、酢を入れないと必要以上に散ってまとまらないのである。 

 

 

お湯から茹でるか、水から茹でるかも問題だ。 

本来はどちらでもいいはずである。 

しかし、圧倒的に割れやすいのはお湯に投入した場合だ。 

それにはふたつの理由がある。 

ひとつは気体の膨張が温度差が多いほど膨張するということだ。 

しかし、水が沸騰するまでに殻の中の気体が抜けることはあまり期待できない。 

気室に穴を開けるなら別だが。 

一番の割れる原因は入れ方だと思う。 

 

水に玉子を入れるなら、静かに入れることができ、指が水に浸かったとしても何も問題がない。 

沸騰しているところに入れるならどうか。 

あまり近くまで手を持っていけないし、100℃のお湯に指を浸けることは本能的に嫌うはずである。 

少し上からポチャンと入れるしかない。 

それではヒビが入っても不思議ではないだろう。 

ヒビが入れば圧力で押された中身が飛び出すのも道理である。 

 

沸騰させ過ぎると玉子が浮いたり沈んだり、あるいはぶつかったりする。 

それも殻にヒビを入れる要因となる。 

玉子自体、80℃もあれば固まるのだから強く沸騰させる必要などないのである。 

 

 

加熱時間も問題だ。 

何分茹でるとどう固まるかである。 

ゆでたまごとしては、最重要なことは卵殻膜は完全に固めること、卵白も固めたい。 

卵黄は中央までちゃんと固めるか、半熟にするかという選択がある。 

半熟にしたい場合、お湯から茹でた方が時間が判りやすいのは当然だろう。 

水からだと不可能に近いかもしれない。 

 

前述のように、お湯からでも静かに投入できればいいはずである。 

また、茹ですぎや水で冷やすのが遅れたり冷やし足らない場合には卵黄の周りが黒ずんでしまうことがある。 

卵白に含まれる「シスチン」が加熱により「硫化水素」を発生させ、卵黄の「鉄分」と反応し「硫化第一鉄」となるからだ。 

つまり硫化水素の発生を減らすか、鉄分との反応時間を短くすれば良いのである。 

 

半熟玉子は熱湯に入れて6分半から7分ほど茹でる。 

冷ますのが遅れるとそれだけ茹ってしまうので冷やすのにも注意が必要となる。 

味付け玉子とするなら、卵黄が半熟である必要すらない。 

卵白が固まっていれば良い。 

後は漬けダレ(しょうゆやめんつゆ、味噌でも良い)の塩の作用で卵黄が固まるからである。 

浸透した塩分で卵黄まで固めるには2~3日を要する。 

ちなみに中華の塩卵(咸蛋:シェンダン)は殻のまま塩水に漬けておき、それを茹でたものである。 

更に付け加えるとピータン(皮蛋)は石灰で漬け込んだ、つまりアルカリで蛋白質を凝固させたものだ。 

いずれもアヒルの玉子が使われるのが日本との大きな違いだろう。 

 

白身がある程度固まる数分間は玉子を転がして黄身を中央にさせる。 

これをしないと片寄ったゆでたまごになってしまう。 

ただし、この際にヒビを入れてしまっては元も子もないのだが。 

 

 

殻を剥くのはいつがいいだろうか。 

茹でて少し冷やしてすぐに剥くとよく剥けるようだ。 

しかし、それも数分も経てば剥きにくくなる。 

すぐに食べたい1・2個なら良いが、それ以上となるとよく冷やして白身が固くなった方が剥きやすい。 

茹で立ての場合、柔らかいので変形も可能である。 

四角くもできる。 

ただし、殻を剥く際にヒビを入れて剥くが、柔らかいのでそのヒビの形が残ることがある。 

 

ヒビは多く入れ、剥いた方が剥きやすい。 

うずらの玉子の剥き方と同じである。 

白身と卵殻膜との間に水分があると剥がしやすい。 

白身までくっついて剥がれてしまっては台無しである。 

水道の水を流しながら剥くと良い。 

空気(息)で剥がすという裏技もある。 

 

 

ゆでたまごが長くなった。 

後は簡単にしよう。 

 

目玉焼き」は白身が固まっていないといけないが、黄身は好みによるだろう。 

半熟よりむしろ生に近い方が好みだ。 

黄身にしょうゆを垂らし、混ぜたいからである。 

普通に混ぜては黄身がもったいないようだが、飯の上でなら何の問題もない。 

要は黄身だけの玉子かけご飯になって白身部分はおかずである。 

もちろん、皿の上でやったなら、パンなどに付けて食べればよい。 

 

フライドエッグ(目玉焼き)には、サニーサイドアップ(片面焼き)と、ターンオーバー(両面焼き)がある。 

ターンオーバーでは黄身が固まりやすいし、下手をすると黄身が潰れてしまう。 

好みによるが、日本人向けではないかもしれない。 

 

 

たまご焼き」は甘い方が良い。 

出汁巻きではなく、昔ながらのたまご焼きで構わない。 

重要なのは油の量と温度だ。 

油が少なく温度が低いと固いたまご焼きになってしまう。 

ある程度油があって温度が高いとすぐに膨らみ、柔らかなたまご焼きになる。 

 

 

これらは手は込んでいないが料理である。 

今の子供はあまり喜ばないかもしれない。 

巨人や大鵬が大人気の頃は子供も喜んで食べたのだが・・・ 


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